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侍ジャパンは素晴らしかった。それでも敗因を語るのを避けてはならない

準決勝敗退に終わった侍ジャパン。世界一に足りなかったものとは

メジャー経験者が語っていた「ムービングボール」対策

 一発勝負の国際大会において、対戦経験の少なさを言い訳にできない。しかし、アメリカ投手陣を打ち崩せなかった理由のひとつだと言えるのではないだろうか。

「打てると思って打ちにいっても、結果的に強引に振らされちゃうんですよね」

 そう話していたのは、シカゴ・ホワイトソックスなどでプレーしていた井口資仁(現ロッテ)だった。05年に「攻撃的2番打者」として世界一に貢献した打者ですら、メジャーリーグ1年目は海外選手の投球スタイルに戸惑っていたという。

「ランディ・ジョンソンやカート・シリングといった超一流のピッチャーの場合は『めちゃくちゃすごいボールを投げる』と極端にイメージして打席に立っていたから、意外と対応できることも多かった。むしろ、名前を知っている程度のピッチャーのほうが苦労したかな。投げる球種はわかっていても、実際に打席に立つと『すげーな』って」

 日本のプロ野球でも、近年ではメジャーから凱旋した広島・黒田博樹のツーシームが話題となったが、彼のような投球スタイルを確立している日本人投手は少ない。頭では「動くボールを投げる」と分かっていても、的確に対応できるものではないのだろう。

「何とか耐えて、打てるボールを待つしかない」。そう断言していたのは、シカゴ・カブスなどでプレーした阪神の福留孝介だ。日本とメジャーの違い。その対応について、彼はこのように持論を述べていた。

「スピンの効いた日本人みたいなボールを投げたり、速くてぐちゃぐちゃっと変な軌道で投げたり。メジャーにはいろんなタイプがいますけど、バーランダーとかリンスカムとか、いいピッチャーっていうのはフォーシームとツーシームを使い分けていましたよね。しかも、メジャーの選手は大きいし、マウンドも傾斜があって固いから、日本で外国人ピッチャーと対戦する時よりもボールに角度がついているように見えるかもしれませんし。もちろん、頭では『こういうボールを投げる』と理解していましたよ。じゃあ、初めて対戦するピッチャーを打てる技術があるのか? と言われればそれは分からない。だったら、自分が打てるボールを待つしかない。僕の場合は、フォーシームを投げてくるまで、ファウルなどで凌いでいましたね」

 井口にしても「ツーシームは変化球だと思って対応していた」と打開策を話していたが、それはシーズンを戦うなかで見出した個々のスタイルである。今回のWBCで唯一のメジャーリーガーだったヒューストン・アストロズの青木宣親は、「球筋とかを伝えていきたい」と言っていたし、自身もアメリカ戦ではチーム唯一の2四球を選んだ。それでも、青木の経験を侍ジャパンに浸透させるには、いかんせん時間が足りな過ぎた。

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田口 元義

たぐち げんき

1977年福島県生まれ。元高校球児(3年間補欠)。ライフスタイル誌の編集を経て2003年にフリーとなる。Numberほか雑誌を中心に活動。試合やインタビューを通じてアスリートの魂(ソウル)を感じられる瞬間がたまらない。現在は福島県・聖光学院野球部に注目、取材を続ける。


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